雲海

世界最大のスキー場・クールシュベル編 (2004/3/10)


●フランス上流階級のリゾート

クールシュベル Jバーリフト  トロアヴァレーの三つの谷には、それぞれ個性があります。ガイドブックなどにも書いてありますが、メリベルは昔ながらの山あいのスキー村といった感じで、日本でいうと野沢温泉とか蔵王のような感じです。レ・メニュエールとヴァルトランは、若者が多い今ふうのリゾート。日本でいうと苗場とか安比でしょうか。そしてクールシュベルは、とにかくお金持ちが多いことで知られています。日本で例えるのは難しいですが、あえていえばバブルのころのトマムとでもいう感じでしょうか。

 トロアヴァレーでの滑走最終日は、このクールシュベルを制覇する予定です。昨日よりは移動は少ないとはいえ、やはり滑りたいコースが山のようにありますから、時間を惜しんで朝早く出発。まずは短かめのゴンドラとリフトを乗り継ぎ、"Col De La Loze"という鞍部からクールシュベルに入ります。ここから中心部のCourchevel 1850へ向けては、なだらかな斜面が続きます。ほどなく中心部に着きますが、まずはスキー場の最奥部を目指すということで、さらに先に進むリフトに乗ります。ここクールシュベルは、トロアヴァレーの中では最もややこしい地形をしていて、ゲレンデマップを見ていても、「あれっ」と思うことがしばしばあります。途中の谷底のようなところでエリアが完全に二分されていることに行ってみてから気付き、その先に進むと一番奥までたどりついたという感じになりました。ここでちょっと滑ったところで妻は休憩。レストハウスは、メリベルやヴァルトランとは違って高級レストランの雰囲気。もちろんカフェテリアスタイルなどではなく、正装のウェイターが料理を運んでいます。さすがクールシュベル。ともかくそこで妻と別れ、私はその奥に降りていく"Bel Air"というコースを滑ります。広くて距離の長いクルージングに最適のコースでしたが、そこから戻ってくるSignalというTeleski(Jバーリフト)が長いのなんの。知らない人のために説明すると、ケーブルからぶらさがっている金具をつかんで股の間に入れ、それに引っ張ってもらいながら自分で滑って登っていくというリフト(左の写真)なのですが、これに10分近くも乗っているとさすがに疲れてしまいました。Teleskiの中には、途中で屈曲していたり、急斜面をグイグイ登っていたりするのもあります。特に大変そうなものには、"Teleski Difficile"(難しいTeleski)という看板が出ていますので、慣れない人は避けた方が賢明かもしれません。

 

●そびえたつソーリール

 Bel Air周辺のエリアを軽く滑ったら、早めに中心部に戻ることにします。もうひとつ別のTeleskiにのって、さらに何本かのリフトを乗り継ぎ、Verdonsという所のレストハウスに着きました。ここは、クールシュベルの中でも最も存在感のあるSaulire(ソーリール)というピークの真下で、そのピークを目指すSaulireロープウェイの乗り場でもあります。Saulireのピークからは、手応えのありそうなコースがいくつも伸びてきており、それらを眺めながら午後の方針を検討しつつ、昼食を取ることにしました。幸い(?)、ここは滑り屋が大勢集まるせいか、他のレストハウスに比べると庶民的なようで、「本日のランチ」は手頃な値段の割には味も合格点でした。

ソーリールのロープウェイ ソーリールの最上級コース  食後は、とりあえず私一人だけでSaulireの頂上を目指します。残念ながら、頂上から降りてくるのは上級コースだけということで、妻はレストハウスで待機です。といっても実際には中級レベル程度のコースもあるのですが、まあここで無理をすることもありません。ともかく私はロープウェイに乗車。上空からクールシュベル全体を見渡しつつ山頂に着きました。

 ここからまずは"GD Couloir"という最上級コースを目指したのですが、この入口がハンパじゃありません。尾根の上、幅3mぐらいのコースを100mぐらい行かないと、コースらしいところに辿り着けないのです。両側は崖、もちろんフェンスも網もありません。普通なら幅3mもあれば小回りでピュンピュンと降りていける程度の斜度なのですが、さすがに私も怖くなって、ターンごとにしっかり止まって降りて生きました。高所恐怖症の人だと、スキーの技術に関係なくちょっと行けないかもしれません。で、ようやく尾根道を終えるとコースらしいところに辿り着くのですが、これがまた左の写真のような岩に挟まれたコブコブ急斜面です。今回トロアヴァレーで滑ったコースの中で、ここが一番大変だったかな。さすがに体力的にきつくなってきたので、適当に流し流し滑ってVerdonsのレストハウス前に戻りました。そこから今度はVizelleというゴンドラに乗って、Saulireのすぐ隣りのピークに登ります。ここからは、山の裏側へ降りていく魅力的なコースが何本かあるのですが、時間の関係でそれはあきらめ、Verdonsに戻る方向に滑り出します。出だしは最上級コースを滑ってみましたが、さっきのに比べるとずっと楽で、途中からは普通の上級コースをかっ飛ばして三たびVerdonsへ。ここで妻と合流してメリベルに戻る方角へ移動していきます。

 メリベルとの境界のちょっと手前から、麓の方に降りていくコースがいくつか伸びています。時間があるのでそのうちの一つを降りてみることにしました。途中から森林限界よりも低くなって、木々に囲まれた雰囲気のある中級コースが続きます。連絡コースのような雰囲気だったのですが、予想以上に長い距離を滑ってLa Taniaという集落に到着。後から地図で確認してみたら、標高差850mもあったようです。そこからはゴンドラとリフトを乗り継いでメリベルとの境界の尾根に出て、あとはのんびりとメリベル中心部に戻って行きました。

●残り1時間の滑りおさめ

ソーリールから  今日はスキー最終日。この時点で時刻は午後3時半ぐらい。妻は「もう満足」という感じで宿に戻ります。しかし、まだあと1時間ちょっとリフトは動いています。ここで最後のスパートをかけることにしました。まずは再び反対側、レ・メニュエールの方へ向かってリフト2本を乗り継ぎ、"Roc De Fer"というピークに登りました。さすがに尾根の向こうに降りている余裕はないので、そこから標高差850mを一気に降ります。このあたりは、アルベールビル五輪の女子アルペン種目が行なわれた場所のようで、この日も何かレースをやっていましたが、こう広いスキー場だと、一部を占有されるぐらい何でもありません。途中、"Le Raffort"と書かれた方に行ってしまいそうになったところでマップを確認。あやうく遥か麓の方へ行ってしまうところで事なきを得ました。メリベル中心部に戻ると、今度はまたしても反対側、クールシュベルに向かう方の"Burgin"ゴンドラに乗車。このゴンドラの山頂駅は、実は昼間にいったSaulire山頂直下だったりします。山頂に着いたのが午後4時40分過ぎですが、写真のように辺りはまだ十分に滑れる明るさです。ただ、これまでずっと快晴だったのが、急に雲が出て来たようです。

 これで素直に下山しても良いのですが、マップを見ると、"Pas Du Lac"というゴンドラ(一昨日モッタレーから吹雪のSaulireに登ってきたやつです)の中間駅での最終乗車時刻が4時55分となっています。ここから標高差にして500mほど降りた地点が中間駅ですから、10分もあれば余裕です。万一乗れなくても宿に戻るコースもあるので、最後にもう1本乗ってしまうことにしました。さっそく滑走開始。と、急にあたりが雲につつまれて視界が悪くなります。これは一昨日の再現かと焦りましたが、程なく中間駅に到着し、ゴンドラに乗り込んでまたしてもSaulireに着きました。あとはメリベル中心部まで一気に滑るだけです。ここの標高差1300mは、途中で分断されることなく一気に滑れるという意味では、トロアヴァレー最大と言ってもいいかもしれません。さすがにこれだけ滑るともう満腹。何も思い残すことはありません。最後は連絡用のゴンドラに乗ってちょこっと滑り、これにて今回のトロアヴァレー滑りおさめとなりました。

●メリベル最後の夜

ホテルドロンの夜景  明日の朝にはメリベルを出発です。最後の夜は、このあたりを散歩してみることにしました。レンタルスキーを返した後、スキーセンターの方へ向かって行くと、何やら大きな建物があります。除いてみるとスケートリンクでした。その横には、1992年の冬季オリンピックを記念する石碑らしきものがあります。どうやら女子アルペンだけでなく、アイスホッケーもこのメリベルで行なわれたらしく、このリンクがその会場だったようです。しかし驚いたのは、このオリンピックの記念碑が、建物の隅の方で雪に埋もれてひっそりと置かれており、街として何ら自慢しようとする雰囲気が感じられないことです。確かに、スキ−場自体の圧倒的な魅力を見てしまうと、オリンピックがあったという程度のことなど、なんら自慢の種にするようなことでも無いかというのは納得できるのですが。

 夕食は、スキーセンターのすぐ近くにあった小さなクレープ屋さんで食べることにしました。ここ数日ボリュームたっぷりの食事にちょっと辟易していたので、ちょうど良いお店を見つけたって感じです。食べ終わって宿に戻ろうとすると、夕方から降り始めた雪が、ちょっと大粒になってきました。明日は麓まで山道を運転しなければならないので、できれば晴れてくれると良いのですが。でも、トロアヴァレー最後の夜、雪の降る街灯りの中を歩くというのも悪くありませんね。


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