7. 主要4エリアの制覇 (Hochkönig)

2014/2/27

スキー・アマデにやってきてから、Salzburger Sportwelt、Gastein、Schladming Dachsteinと、主要エリアをそれぞれ一日ずつ滑ってきた。最初に書いた通り、スキーアマデは大きく4つのエリアで構成されているので、今日は残る一つのHochkönigエリアに向かう予定である。もちろん滑っていないスキー場はいろいろと残っているが、とりあえず今日で主要4エリアを滑り終えるということになるはずだ。

負傷から一日明けて目を覚ましてみると、痛みはわずかに和らいだかという感じで、まあ何とか我慢しながら滑ろうかという気持ちになる。一方、空はこれまでの数日間ほどの快晴ではないが、雪が降りそうな感じもあまりない。まあ好天と言っていいだろう。いつも通りの朝食を取って、さっそく車を出す。Hochkönigに向かう途中で、一昨日に滑れなかったSt. Johannの前を通ったのだが、この日もやはりリフトは動いていないようだった。

Hochkoenig

Ski amade ウェブサイトより取得(2014)

さて、今日の目的地であるHochkönigは、とにかく横に長いエリアである。上に示したコースマップを見ればわかるように、とにかく小さなピークが横に連なっていて、文字で表現するならば、「ΛΛΛΛΛ」というような感じだろうか。5つあるピークのうち、最も左(東)のピークはMühlbachというスキー場に属する。2番目のピークはMühlbachとその隣のDientenというスキー場の境界となっており、Dientenは更に3番目と4番目のピークも含む。そして最も右(西)のピークが属するのが、Maria Almというスキー場である。

Wagrainから車で向かった場合、最初に到着するのは最も東のMühlbachである。ここで、このあまりに横に長いエリアをどう制覇しようかと悩む。片道で滑って行ってバスで戻るということも考えたが、昨日のSchladmingでやったように、行きに滑ったコースを帰りはリフトで登り、行きに乗ったリフトの下を帰りは滑るというパターンで行けば、それほど無駄も無いだろうと思い、普通に車を停めて滑り始めることにした。

Sign of Koenigstour

滑り始めてから看板を見て気付いたのだが(上の写真)、ここHochkönigには、"Königstour"というツアールートが設定されている。実はよく見るとコースマップにも書かれているのだが、要するに、東の端のMühlbachから西の端のMaria Almまで、あるいはその逆を、効率的に移動しながら滑るための順路である。普通の人は片道でやるのだろうが、これを往復で滑りきってしまえば、このエリアの大半を滑ってしまうことができそうだ。

さっそく最初のゴンドラに乗る。Mühlbachの村は、南北を山に挟まれた狭い谷間にある。北にあるのはHockkönigの山で、これは山の名前であると同時にこの地域一帯の地名としても使われている。山の向こうはドイツで、Königsseeという湖があり、周辺はBerchtesgadenという風光明媚な観光地だ。一方、村の南側にある山はそれほど高くないが、ここがMühlbachスキー場のゲレンデとなっている。ゴンドラ山頂駅に着いて振り返ると、Hochkönigの岩っぽい山容が間近に見える。右手にはHochkeilというスキー場が見えている。遠目にはリフトが動いていないように見えるし、行き方もよくわからない。いずれにせよここはスキーアマデには含まれず別料金になるということで、気にしないことにする。

Hochkoenig

このゴンドラは山の中腹までしか行かないので、まだ上にコースが見えるのだが、ここに直接登るリフトは無い。尾根の反対側から登ってくるリフトに乗ればよいのだが、これはKönigstourの逆向きコースで戻ってきたときに乗るはずなので、今はそのまま奥に向かってトラバースしていくコースを滑る。これからしばらくは、Königstourのルートの通りに滑るので、何も考えなくて良さそうだ。二つめのピークからDientenに入り、三つめのピークへと登る。Dientenは、Hochkönigの三つのスキー場の中でも最も標高差が小さく、横へ横へと移動しているような印象が強いのだけれども、実際にはどのリフトも400m以上の標高差があって、一本一本は結構楽しい滑走だ。あくまでも、これまで滑ってきた他のスキー場が大き過ぎるということだろう。下の写真は、三つめのピークに登るZachhofalmbahnという6人乗りリフトの上から撮ったものだが、このあたりも、眺望も雪質も良く、そのままずっと滑っていてもいいぐらいである。

Zachhofalmbahn

さらにもう一つ奥、東から数えて4つ目のピークまで行くと、その先にMaria Almのゲレンデが見えてくる。複雑な地形を縫いながら滑っていくMühlbachやDientenと違い、Maria Almはかなり開放的なスキー場だ。南北にそびえる山の険しさも緩んできて、のどかな印象に変わってきた。このピークからは、東と西への二つのコースの他に、北に降りていく三つめのコースが存在する。リフト1本のシンプルなコースだが、標高差645mと馬鹿にできない。しかしこのコースもちゃんとKönigstourに組み込まれていて、その通りに滑ってからMaria Almへのコースへと向かっていく。

最も西にあるMaria Almは、標高1,900mのピークから2方向に尾根が伸び、その間の谷に様々なコースが広がっている。これは日本にもわりとよくあるレイアウトで、例えばトマムとかサホロ、あるいは八方尾根なども近いかもしれない。ベースの標高は840mだから、縦の滑走充実度も相当なものである。Dientenから行くと、登りのリフトが尾根の中腹に到達するので、そこから谷の方へ降りて麓に着いたところで、Königstourの片道が終了である。

Maria Alm

実はこの先、車道を隔てた反対側の山にも、Maria Almスキー場の別のゲレンデがあるのだが、直接スキーで移動することができない。ゴンドラまであるゲレンデだが、そのゴンドラの標高差がわずか298mと、さほど食指が動く感じでもない。なのでこのままKönigstourの逆方向をスタートすることにした。

最初はゴンドラとリフトで標高差1,130mを一気に登ってピークに立つ。Königstourでは、ここから尾根を一気に降りてDientenに向かうのだが、Maria Almの広いゲレンデを素通りというのも、さすがにもったいないので、山頂エリアの別のコースを1本滑り、リフトで山頂に戻った。次は予定通りKönigstourのコースを行く。尾根伝いの開放的なコースが気持ちいい。Dienten側の麓に降りたら、そこからは長いゴンドラで隣のピークに戻る。ここはさっきの3本コースのピークだが、枝分かれのコースは滑ってしまったので、そのまま戻る方向のコースを滑る。全体的に快適な中斜面が多いKönigstourの中で、このコースはやや斜度がきつく、雪面も荒れていてちょっと大変だ。前方には、さらにもう一つ東のピークが見えている(下の写真)。これから向かう帰り道では、この写真の中央のリフトに乗って山頂まで登り、さらにその向こうに滑っていくというわけだ。

Buerglalm

そこから更に滑って登ってを2回繰り返して、Mühlbachの山頂に到達した。今朝の出発時に登れなかった山頂である。ここから中級コースを経て初級迂回コースというのがKönigstourであるが、ここで今日初めてKönigstourを逸れる。ここからスタート地点のゴンドラ乗り場までは、中級から上級と繋いで標高差900m分を一気に滑り降りることができる。Königstourは上級コースを滑らなくて済むように設計されているのだろうが、どう考えてもこちらの方が楽しそうだ。すぐ前にHochkönigのゴツゴツした山肌を見ながら、人の少ない上級コースを滑り降りた。

Panorama from Muehlbach

これでHochkönigエリアの滑走を終了。主要4エリアを無事制覇したことになる。ずいぶん沢山滑ったような気がするが、まだ1時45分、もう少しどこかを滑っていける。地図を見ると、一昨日に行ったGasteinエリアの手前に、Goldeggという小さなスキー場がある。ここから行ってもそう遠くはなさそうなので、ここを次の目的地に決めた。

谷間の道からハイウェイに出て、15kmぐらい行ったところがGoldeggへの入口のはずである。ただ、メジャーなスキー場ではないので、頼りになる道路標識は見当たらない。当たりをつけて曲がってみたものの全然違うところに出てしまったりしたが、かなり近くまで来てようやく看板が見つかるようになった。Goldeggスキー場の手前には洒落た感じの小さな古城があったりして、むしろ普通の観光地として賑わっていそうな雰囲気である。そこから細い道を延々と進むと、なんでもない牧草地のようなところにTバーリフトが架かっているのが見えた。さっそく車を停めてゲレンデに出るが、今回のスキーで初めての「がっかり感」である。むしろ逆に、スキーアマデといえどもこんなスキー場もあるのか、と妙な感慨にふけったりする。それでもTバーリフトを降りるあたりからは両側に林が現れ、ちょっとは良い雰囲気になってくる。さらにTバーリフトがもう1本あり、標高差は400m弱。こんなに貧相に見えるスキー場でも400mの標高差というのは、後で調べてみてちょっと驚いた。さらに、山頂からは反対側に降りていくコースもあったが、残念ながらリフトは動いていなかった。

Goldegg

すんなり滑り降りて車に乗り込んだ時点で午後3時。あと1時間ちょっとはリフトが動いているはずだ。地図を見ると、40km近く離れたところに、実質リフト2本のEben im Pongauというスキー場がある。移動はほとんどハイウェイなので、1時間もかからずに着けるはずだ。いそいそと出かけると、予想通り3時40分にはEben im Pongauに到着した。

リフト2本といっても、それぞれの標高差は約400m。それが縦に繋がって、スキー場全体としては標高差737mという立派なスペックである。上のリフトを降りたところは、山頂というよりは小高い丘といった感じだが、向こう側の山並みが綺麗に見える。上のリフト沿いのコースは2本あるので、片方を滑ってからリフトで上に戻り、もう片方を経由して一番下まで降りた。たかだか40分かそこらの滑走だったが、Goldeggの地味な滑走の後だっただけに、思いがけない充実感だった。

Eben in Pongau

夜はこれといった計画もなく、スーパーでビールと簡単な食事を買って帰る。実は宿にもサウナがあるので、試しに入ってみようと思ったが、混浴というのは人数が少ないと逆に気になって入れない。結局、中に女性の気配がする間は入れず、ずいぶん待ってから一人サウナとなった。それでもビールは美味しくなったけれども。

主要4エリアの滑走を終え、滑ったスキー場の数は17、つまり残りはあと8つである。もっとも、ここから先はなかなか計画が立てにくい。とりあえず、通常のスキー場とは違った雰囲気が味わえそうだということで、Dachasteingletscher(ダハシュタイン氷河という意味)への期待が最も大きい。ここを核として、どんな順番で回ろうかなどと考えながら、Wagrainでの5泊目の夜は更けていった。

本日の滑走: リフト・ゴンドラ18本/総標高差9,048m

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