第四日

2015/2/18

第四日の行程

国土地理院発行の地理院地図(電子国土Web) を元に加工(2015)

朝6時40分に起床。今日は5つのスキー場を回る予定である。当初の計画では、昨日と今日だけでは芸北エリアのスキー場を滑り切れない可能性もあると考え、明日の午前中も使えるように、ここグリーンヒルおおあさに連泊することにした。しかしここまで非常に順調にきており、どうやら今日中に滑り終えることができそうだ。

朝食を済ませて外に出る。車にはうっすらと雪が積もっている。どうやら昨日の雨が夜には雪に変わったようだ。しかし大した積雪ではないなと思って車に乗り込んだら、急に雪が本降りになってきた。かなりめげるぐらいの吹雪である。明日に備えて連泊にしたのだから、今日は温泉にでもいってのんびりしてスキーは明日にしようか、などと弱気の虫が顔を出してくる。

ちなみに最初の目的地はスキーパーク寒曳である。宿からは車で10分程度の近さで、ロビーにパンフレットも置いてあった。とにかく嫌だ嫌だと思いながら国道を離れ、スキー場に向かう道を運転していたのだが、そうしたら急に空が晴れてきた。晴れたと思ったらスキー場に到着。俄然やる気が出てくる。営業開始の8時までまだ15分あるので、リフト券を買って、はやる気持ちを抑えながらリフト乗り場で待つ。

スキーパーク寒曳

当然のようにリフトは一番乗りである。ここのスキー場は、リフトが縦に2本。下のリフト沿いにはコースは一つしか無いが、上のリフトからは、最大6種類のコースが選べる。もちろん多少似通ったコースもあるのだが、普通なら2〜3本は滑っていきたいところだ。しかし今回、リフト券は2回分しか買っていない。つまり上のコースは1本で済ませるということだ。それともいうのも、このあと行く予定の瑞穂ハイランドへの期待が大きいからに他ならない。せっかくだから、時間をかけるならば瑞穂ハイランドで滑りたいというのが本音なのである。だったら最初から瑞穂ハイランドに行けば良いではないかと言われたら返す言葉も無いのだが、一寸のスキー場にも五分の魂。寒曳にだって行ってみるだけの魅力はある。

8時ちょっと前に、リフトを動かし始めてくれた。リフト係のおじさんに「リフト脇のコースは荒れてるから、左寄りを滑ってくるといいよ」とアドバイスされる。下から見ると全面きれいに雪でカバーされているように見えるのだけれど。ともかくリフト2本を乗り継いで山頂に到着した。どれを滑ろうかと迷うところだが、上級者コースで最も滑走距離が長そうな、チャレンジコースというのを滑ることにした。

ところがである。リフト降り場からチャレンジコースへ向かう道が、思いっきり上り坂なのだ。100mぐらいは歩かされただろうか。思えばこれが、この後あちこちのスキー場で出くわすことになる苦難の上り坂続きの端緒であった。

上り坂には辟易したが、滑り始めてみればフカフカの超新雪である。麓はともかく、山では昨夜のうちに結構な積雪があったらしい。他に滑っている人もおらず、自分のシュプールだけが残る正真正銘のファーストトラックである。深雪の感触を十分に味わいつつ、後半のセンターコースに入ってからはおじさんのアドバイスに従ってリフトから離れたところを滑り、8時20分頃には駐車場に戻ってきた。

大朝の町に戻って瑞穂ハイランドに向かう。浜田自動車道沿いの道なので、当然国道だろうと思い込んでいたのだが、実は単なる県道らしい。やがてだんだんと道が曲がりくねるようになり、道端の雪も目立つようになってきた。このあたりの地形もちゃんと把握していなかったのだが、考えてみれば広島県から島根県に移動するわけで、結構しっかりした峠がある。三坂峠というらしい。峠を越えると下り坂になり、道端の雪も減ってきたところで、瑞穂ハイランドの看板が見つかるようになった。

瑞穂ハイランドのゴンドラ

駐車場の正面にゴンドラ駅がある。立派な建物だが、その向こうのゲレンデはよく見えない。ここからは、ゴンドラ沿いの谷底を滑る細いコースがあるだけで、スキー場の実質的なエリアはゴンドラ山頂駅の上にある。リフト券売り場で午前券4,630円を購入。さっそくゴンドラに乗って前方を見ると、まさに雲の中に向かって突っ込んでいく。あっという間に視界が悪くなった。それでも雪はそれほど降っていないので、眺望はともかく滑走は楽しめそうである。

ゴンドラから第1リフトへと乗り継いで山頂へ。リフトだってもちろんクワッドである。とにかくこれまで滑ってきたスキー場とは雰囲気が違っていて、ガンガン滑らせてあげますよ、という意気込みが伝わってくる。リフトを降りたところはスキー場の最高点で、標高1,217mの立派なピークなのだが、国土地理院の地図を見ても山の名前は載っていない。ちなみに尾根伝いに1kmほど奥に行ったところは、標高1,218mの阿佐山だそうである。そしてこのピークを境として、今のぼってきたゴンドラの側がハイランドサイド、これから向かう奥の側がバレーサイドと呼ばれている。

ここからバレーサイドに降りていくところは、コースの選択肢が沢山ある。一番ハードそうなチェリートゥリーはクローズだったので、次に厳しそうなクレージーベアというのを行ってみる。かなりの長さで急斜面が続くコースだが、昨日からの新雪のおかげで気持ちよく滑ることができる。それでも半分も降りれば息は上がってしまい。そこからは休み休み降りた。途中からは中級コースに合流である。

そのまま向かいの第6リフトで一番奥まで行きたかったが、どうやらリフトが止まっているようだ。今日は営業しないのかと思って、がっかりしながら係員に聞いてみると、9時40分には動きますとのこと。あと10分程度なので、第3リフトでさっきの山頂に戻り、もう1本滑ってくる頃には動き出しているだろう。第3リフトももちろん高速クワッドなので、標高差500mをあっという間に上りきり、今度は中級コースのビッグモーニングを滑ってきた。ところが第6リフトはまだ動いていない。さすがに待ちかねた人が他にもいるようだ。もう一度係員に聞いてみると、準備はできたのでもうすぐ動くはずだと言う。それなら待っている間にもう1本と、第3リフトから今度は初級向けのリトルモーニングを滑る。幸い、徐々に雲が晴れてきて遠くが見えるようになった。そしてコースの下の方まで来ると、第6リフトが動き出しているのが見える。既に大勢のスキーヤーが乗車しているようだ。

瑞穂ハイランド(バレーサイド)

第6リフト沿いのコースは、タタミという不思議な名前が付いているが、谷間に沿ったオーソドックスなコースである。そこからもう一度第6リフトで登ると、リフト降り場の横に怪しいコースがあるのを見つけた。ゼルコバというこちらも妙な名前のコースなのだが、入口に立てられた看板には、「沢沿いの狭いコースを通ります」「超上級」「スノーモービルも入れません」「救助できないので自己責任」と、恐怖を煽り立てるような言葉が並んでいる。念のため、リフト係員に「ここは閉鎖ではないんですよね」と確認してから、林の中に突入して慎重に滑り始めた。コースと言えるほどの場所は無いが、前に滑った人のシュプールをトレースしながら進む。確かに中級者ぐらいだと立ち往生してしまうかもしれない。しばらく行くと出口が見えたが、その手前が更に狭くなっていて、これが看板にあった「沢沿いの狭いコース」かと納得する。

ゼルコバを滑り終わったら、今日3回目の第3リフトに乗り、今度はハイランドサイドへ。スカイラインからチェスナットというコースを繋いで、一気にゴンドラ降り場まで滑る。そこからゴンドラと第1リフトで再度山頂に立ち、このまま下まで降りたら終わりにしようかと思ったが、ふと見ると、さっきはクローズだったチェリートゥリーが滑れるようになっている。ほんの一瞬だけ悩んだが、こういうときは悩んだところで結論は決まっている。雪で真っ白になった木と木の間を進み、チェリートゥリーを滑り始めた。

瑞穂ハイランド(チェリートゥリー)

途中でコースがわかりにくいところがあったが、そのまま進んだら急斜面が出てきた。さっきのクレージーベアと似た斜面である。そこを何とかこなしたら広い中斜面に出た。チェリートゥリーは一番下まで行ってから他のコースと合流するはずなのだが、どうやらさっきのわかりにくいところで道を間違え、ディアというコースに入ってしまったらしい。まあこちらも楽しかったので特に不満もなく、そのまま今日4回目の第3リフトに乗って山頂に上がると、今度はスター、ビーチ、ラビットというコースを通って下山した。ラビットというコースは何故か滑る人が少ないようで、この時間になってもまだ新雪がたっぷり残っていて嬉しい。山の上は降ったり止んだりのめまぐるしい天気で、ガスに覆われていることも多かったが、ゴンドラの途中から下は完全に雲の外で、雪が降りそうな気配すら無かった。

リフト券の時間は40分ほど残っているが、これで今回のスキー旅行の目玉である瑞穂ハイランドは終わりにする。残念ながら景色はあまり見えなかったが、滑走の充実感はさすがだった。もちろんゴンドラやリフトの機動力も申し分ない。高速のインターからも近いので、広島在住のスキーヤーにとっては天国だろう。

続いて近所の旭テングストンを目指す。距離にして9kmほど、30分もかからない。コースバリエーションはそれほど無いが、一応ゴンドラもあるスキー場だ。それにしてもテングストンとは妙な名前で、天狗に何か関係があるのかと思っていたら、ゴンドラ駅の壁には"Asahi Ten Good Stones"と書かれている。10個の良い石とはどういうことか、近所に十良石という地名でもあるのだろうか。どうも釈然としないままゲレンデに出たが、後で調べたところによると、やはり天狗石山というのがあるらしく、それを無理矢理こういう綴りにしたようだ。

ユートピアサイオトと似たようなY字型レイアウトなので、まずはゴンドラで登っていく。ゴンドラ山頂駅の外に出ると、すぐ横のコースに「閉鎖中」のロープを見つけた。ゴンドラ沿いに降りていくコースのはずだが、それではどうやって下山すれば良いのか。ゲレンデマップを見ると、Y字の右側のコースの途中からも下山コースに出られるようだが、今いる場所からはよく見えない。そちら側に伸びる第3リフトというのに乗って、スカイウォークというコースを降りてこなければならないようだ。

旭テングストン

今いる場所はY字の結節点で、しかも両側のリフト沿いにはいくつかのバリエーションコースがあるので、周囲を見渡すと実にいろんなコースが見える。上の写真はパノラマで撮ったものだが、いろんな方向からコースが集まってきているのがわかるだろうか。ここからまずは左側に伸びる第1リフトに乗って、チャレンジという上級コースを滑る。イラスト調のゲレンデマップから想像したよりも長かった。その後は右側の第3リフトへ。こちらは傾斜は緩いが更に長い。山頂からは、(上から見て)左側に抜ける下山コースを見逃さないようにと、ゆっくり注意しながら滑ってきたが、コース半ばを過ぎたところでやはり「閉鎖中」のロープを発見。万事休すである。ゴンドラ駅に戻って「下りはゴンドラに乗るしかないんですか」と聞いたら、無言で下り線乗り場を指差された。しぶしぶゴンドラで下っていくと、すぐ横に下山コースが見えたが、普通に滑れるコンディションのように見えた。もちろん閉鎖するからにはそれだけの理由があるのだろうが、なんとも恨めしい。結構大きなスキー場だと思ってきたのだが、結局ペアリフト2本分を滑っただけであった。

さて、これで今日三つめのスキー場を終え、残すところあと二つである。残る二つは中国道吉和ICの近くにあり、ここから80kmも離れている。昨日の龍頭ハウスからなら20km弱でずっと近かったのだが、こういうスケジュールにしたのには理由がある。事前の調査によると、二つのうちの片方・もみの木森林公園スキー場が、第3火曜日休業となっていたのだ。昨日がまさにその第3火曜日で、やむなく今日に回したというわけだ。

瑞穂と大朝の間の峠道が大変なのがわかったので、帰りは高速に乗る。峠など一気にトンネルで越えてしまってあっという間である。浜田道から中国道に入り、時間に余裕がありそうなので一つ前の戸河内で降りる。龍頭ハウスの方へ入る道を見送り、そのまま高速沿いに谷間の道を進んでいく。谷がちょっと開けたところで、右側の山の斜面に女鹿平温泉めがひらスキー場が見えてきた。遠目に見ている角度のせいもあると思うが、意外と大きなスキー場である。

めがひらスキー場は、1998年開業と新しいスキー場らしく、ちょっと変わったところもある。まず目に入るのが、センターハウスの横にある「ウッドワン美術館」というもの。スキー場には似つかわしくない小綺麗な美術館だが、冬の間は休館らしい。次にセンターハウスに入ると、「入場券+リフト券」を買わなければいけない仕組みになっている。リフト券にはいろんな種類があったが、その中から「入場券+3回券(2,000円)」というものを選んだ。

めがひら

めがひらはリフトが縦に2本並んだスキー場だが、特徴的なのは、下のリフトが短いペアリフトなのに対し、上のリフトが1,000mと長いクワッドリフトになっていることだ。3回券を買ったので、当然のことながら上のリフトに2回乗ることにする。ちょうど吉和地域一帯が盆地になっていることもあり、山頂からの眺めは開放的だ。山頂からは、上級・中級・初級と3本のコースが用意されているが、初級コースはコクド系によくあった「ルンルンコース」のような迂回路なので、残る2本を滑れれば満足という感じ。まずは上級向けのダウンヒルコースを滑るが、視界の開けた気持ちの良いコースだ。その後は再び山頂に戻り、今度は中級のセンターコースへ。このコースで一気に麓まで滑ると、このスキー場の自慢である2,300mの超ロングダウンヒルということになるらしい。

めがひらを滑り終わったら、本日の最終目的地・もみの木森林公園を目指す。名前からもわかる通り、公園に付帯する小さなゲレンデという感じであろう。めがひらから国道に戻ると、そのまま横切って反対側の山に入っていくが、通る車が少ないらしく、雪の轍がけっこう大きくなっている。距離にするとたいしたことは無いのだが、いささか緊張するドライブで公園の入口に到着した。

スキー場を目指して進むと、雪遊び広場駐車場というのがあった。ゲレンデは近そうなのだが、ちょっと心配になって、まずは公園センターというところに行ってみた。受付で「リフト券はここで買えばいいのですか」と聞いてみたのだが、すると予想外の返事が。「リフトは土日のみ営業しております」とのこと。これは予備調査不足だった。Yahoo Sportsから辿ったtenki.jpというサイトで確認してきたのだが、後日スキー場の公式ページを見たら、確かに<平日運休>と書いてあった。tenki.jpには、たぶん他の施設の休業日が書いてあったのだろう。

ショックを受けつつ、あきらめきれずに雪あそび広場駐車場に戻る。ふと見ると、駐車場の奥の斜面を歩いて登ったような足跡がある。あそこまで登ればゲレンデの全貌が見えるかもしれないと思い、念のためスキー板も担いで登ってみる。すると予想通りにゲレンデが見えた。ちょっと先にはロープトウがあり、山頂までもたいした距離ではないように見える。せっかくだから登ってみよう。普段なら登ってまで滑るということはしないのだが、ここまで来たのにというがっかり感と、「ちょっと登って滑ってしまえば全コース制覇したようなものだ」という思いが、普段ならやらないような行為を思い立たせる。しかも、さっきまでずっと降っていた雪が止んで、まるで謀ったかのように青空が見えてきた。これは行くしかない。時には膝下までもぐるような雪の上を歩き、ロープトウの7合目ぐらいまで来たところで、まあこれでいいかと滑ってしまった。少なくともスキー場ならではの景色は見られたし、これで良しとしよう。途中からコースを外れ、そのまま駐車場に滑り込んで、今日の全滑走終了である。車に乗り込んだら、さっきの晴天が嘘のようにまた雪が降り出してきた。

もみの木森林公園

帰路は時間に余裕があるので、ずっと下道を行くことにした。戸河内まではさっき来た道を戻り、その先は国道186号を進む。広くて良く整備された走りやすい道だが、標高はどんどん高くなってきて、思いのほか風光明媚なところを進む。戸河内を過ぎて30分弱で、大朝に向かって右折する交差点に着く。この先へ進むと芸北国際やサイオトで、昨日まさに反対側から運転してきたところである。ここからは昨日と同じルートになって、5時15分頃には大朝着。夕食のあてが無いことはわかっていたので、昨日と同じセブンイレブンで弁当を買ってくる。ついでに給油も済ませてグリーンヒルおおあさ着。この日はまだ風呂の用意ができていないということで、先に夕食を済ませてからの入浴。それでも雨ではなかったおかげで、昨日に比べれば身体は全然冷えていない。とにかくこれで芸北地区10スキー場を制覇し、明日は一気に東征の予定である。

本日の滑走: 5スキー場、リフト18本(旭テングストンのゴンドラ上下線を除く)、自力登行1本

本日の走行距離: 189km

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