定食

温泉三昧編 (2002/8/18〜8/19)


●タバコン温泉へ

 一夜あけて日曜日の朝である。買い出しを兼ねて街に出てみる。ん?ん?ん?なんか違うぞ。昨日の喧噪が嘘のようで、ごく普通の街ではないか。歩いてても全然怖くないし。ちょっと安心して通りを歩き、スーパーを発見した。ここでパンやら水やらジュースやらを買い込み、その後はホテルに戻って朝食にする。レストランの雰囲気はコロニアル風で良かったが、食事は普通のコンチネンタルブレックファーストだった。さて、今日はこれから200kmほど離れたタバコン温泉というところまでドライブである。さっそくチェックアウトしてあわただしく出発する。15分ぐらい走ったところで、昨日の5000円しか両替してないことを思い出した。今朝ホテルでもう一度両替しようという予定だったのだけど、戻るのも面倒臭いし、この先空港のすぐ近くを通るので、空港で両替していくことにする。三万円ほど替えてとりあえず安心し、あとは一気にタバコン温泉に向けて走るだけである。

 最初の40分ぐらい、San Ramonという街までは快適なハイウェイを行くが、その後は細い九十九折りの道を延々とドライブすることになる(でも、舗装してあるというだけでとても文句なんか言えないということに気付くのは、あと何日かたってからなのだが)。なんとなく九州あたりの田舎を思わせるような風景の中をしばらく走り、午後1時頃にChachaguaとかいう小さな街を通ったところで、食堂らしき店を見つけ、ここで昼食を取ることにした。いきなりスペイン語会話か?と思ったが、我々のような温泉客がよく通るのか、メニューには英語も書いてあってちょっと拍子抜けだった。ここで私が頼んだのが、「コスタリカの標準的なランチ」とか説明されている、cosadaとかいうもの。中身もわからないまま勇気を出して注文したら、上の写真のようなものが出てきた。要するに「定食」ってことだな。そんでもって食ってみるとこれが大当たり。基本的にはメキシコ料理風のメニューなのだが、味がもう少しあっさりしてて非常に日本人の味覚にあっている。持ってきた英語のガイドブックには「コスタリカの食事には特に見るべきものはない」なんて書いてあったのだが、アメリカ人の食事評はあてにならんもんだということを実感したのであった。

 昼食後さらに30分ほどのドライブでタバコン温泉着。ここは、アレナル山という火山の麓の温泉郷なのだが、その中でも「タバコン・リゾート」というホテルが経営している温泉施設がもっとも大きくて有名なのである。いってみれば、箱根小湧園ユネッサンみたいなもんですね。そういう高級リゾートなので、もちろん従業員は英語ペラペラだし、客層も外国人が多い感じだ。とにかく、無事到着した我々は、休む間もなく、さー露天風呂に直行だーっ、とはしゃぎっぱなしなのであった。

●温泉三昧

タバコン温泉1  ホテルから温泉までは徒歩5分ぐらい(シャトルバスもある)。日帰りで温泉に入ると2000円近く取られるが、宿泊客は無料である。温泉といっても西洋風で、男女一緒に水着を着て入る。さっそく水着に着替えて目の前のプールへ。ここには20だか30だか数え切れないぐらいの風呂があるのだが、半分ぐらいはプールのようになっており、残りの半分が渓流風になっている。まずはプールめぐりから始めることにした。お湯は無色透明で臭いもなく、日本の温泉好きにはちょっと物足りない感じもするが、アメリカ生活でゆっくり風呂に入ることもないだけに、とにかく暖かいお湯につかって思いきり手足を伸ばせるだけでも有難い。

 いくつかプールめぐりをしたら、次は渓流コーナーへ。どちらかというとこっちの方がここのメインという感じで、パンフレットなんかにも右の写真のようなのが使われている。もちろんここに入れるんですよ。写真にも湯気が写っているように、これが全部温泉のお湯なわけです。もっとも、渓流といっても自然のままではなく、人工的に流れを整えたり滝を作ったりして、より気楽に楽しめるようにしてある。この滝もうまい具合に作られていて、うたせ湯のようにするだけでなく、滝の裏側にちょっとしたスペースがあって、そこに座ってくつろぐこともできたりする。いやーなんだか温泉というよりテーマパークの風情ですね。お湯の温度はいろいろに調整してあって、この滝なんかは40度ぐらいあるのでそんなに長居もできないが、上流の方にはぬるめのところもあって、そこではビール片手の飲んだくれが赤くなって風呂につかり、世間話などしている。シラフで過ごすにはいささか居心地が悪いので、そそくさと最初のプールに戻ってきて、プールサイドバーでビールを飲んだりしてくつろいだ(結局自分も飲んでいる)。そういえば、ここでとある日本の有名な学者さんとその家族を目撃したんだった。なるほどコスタリカが似合うよなあ、という感じの方ですが、この旅で初めてみた日本人である。その後もう一組日本人っぽい人たちがいたが、話し声を聞いてみると韓国人だった。

 天気がよければ、温泉につかりながらアレナル山という火山の姿を眺めることができるらしい。この火山はかなり活発に活動しているようで、パンフレットには、運が良いと噴火して真っ赤な溶岩が流れるところが見えるとある。なんか危ないんじゃないかという気もしないでもないが、それが売りだというんだからしょうがない。しょうがないから見てみたい気もするのだが、あいにく今は雨期ということもあって曇っており、アレナル山の姿は見えない。うむ。まあいいか。確かに名物・アレナル山は見えないのだが、ひたすら温泉につかってのんびりしていると、そういうこともまあどうでも良くなってくるのだ。そのうち夕方になったので、今日のところはとりあえず撤収することにした。部屋に戻ってひと休みしたら、ホテルのレストランで夕食である。一流ホテルらしい無難な味で、地元っぽさがあふれていた昼食とは対照的である。こうしてタバコン一日目は終わったのだが、ベッドに入ってうつらうつらしていると、外から何だか凄い音がしてきた。どうやら雨になったらしい。それも相当の豪雨だ。なるほどこれが雨期ということかと思いながら、明日もどうせ風呂に入るだけだし、多少の雨は別にいいか、と思いながら眠りについた。

タバコン温泉2  明けて月曜日。昨日と同じレストランで朝食。よくあるバイキングだが、その場でミキサーで作ってくれるフルーツジュースが美味しかった。朝食後は、くつろぐ間もなく温泉へと急ぐ。温泉の泥を使ったエステをしたいとかで、朝の9時に妻が予約を入れてしまっているのだ(女の人というのはなんであんなにエステが好きなのだろう?)。温泉はまだ開いたばかりで、あちこちで掃除をしている。プールの方は、毎日お湯を全部抜いて掃除をしているらしい。エステに向かう妻と別れて、渓流コーナーを堪能する。すると少しずつ天気が良くなってきて、アレナル山が姿を見せ始めた。見えなくてもいいやとは言ったものの、やっぱり見えるとちょっと嬉しい。箱根の温泉につかって富士山を見るようなもので、二つ揃って初めて本当にタバコンを満喫したと言えるのである(ホントか?)。よっしゃよっしゃと満足して、ついでに写真撮影。表紙の写真がそれである。そうこうしているうちにプールの方も準備ができた。あっちこっち移動するのもいい加減飽きてきたので、しばらくプールでのんびりすることにする。ここのプールが気が効いているのは、プールサイドバーのカウンターが直接プールに面していて、お湯につかったまま飲み物を飲んだりできることだ。カウンターからちょっと離れたテーブル席もあり、そこでお湯に浸かりながら読書にいそしむ。右の写真は、ちょっとカメラを意識しているようにも見えるかもしれないが、その通りである。ちなみに読んでる本は、このウェブサイトでも紹介している「マンハッタン物語」の英語版だったりする。エステを終えた妻も戻ってきたので、施設内をゆっくりもうひと回りしてみる。ただし、妻はせっかくの泥エステの効果を落としたくないので、水着に着替えず散策のみだそうだ。そのそばで私は次から次へと温泉に入ってみる。なんだかヘンな夫婦だ。もとより風呂はもう満喫しているので、こんなもんでいいかとホテルに戻ることにする。なにしろこれから過酷なドライブが待っているのだ。部屋に戻ってみると、テラスからもちょっとだけアレナル山が見えた。昨夜の大雨が嘘のようだ。ぐずぐずしていてもしょうがないので、さっさとチェックアウトを済ませて出発することにした。こうして今回のコスタリカ旅行お気楽編は終了し、ワイルド編へと進んでいくのであるが、この時点では「おー、なんかコスタリカって楽ちんじゃ〜ん」ぐらいにしか思っていないのであった。


 悪路爆走編に進む


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