リヨン編 (2004/3/11) |
目覚めてみると、外は曇り。しかし道路は真っ白です。夜のあいだにずいぶん雪が降ったようですね。我々のレンタカーはスタッドレスではなく、チェーンすら持っていないので、ちょっと心配です。まあ昨日のうちにスーパーでチェーンを売っているのは確認してあるので、危ないようならそれを買って帰ろうと思いつつ、朝食を取ります。朝食の間も、時折粉雪が舞ってきたりして、やっぱりノーマルタイヤで帰るのは無謀かなあ、という気がしてきました。
4泊ほどした名残惜しいHotel Doronをチェックアウトし、車に荷物を積み込みます。そうこうしているうちに空が晴れてきました。また、ホテルの前の道は一方通行なので、通る車もちょっと少ないのですが、大通りまで出ると麓から上がってくる車がひっきりなしにあって、道路の雪はみるみる融けていきます。こりゃ何とかなりそうかな。それにしても、昨夜の雪、そして朝から空は晴れてきそうということで、今日のスキーはさぞかし楽しかろうと後ろ髪を引かれますが、休みが無限に続くわけでもないし、帰りの飛行機だって決まってるし、こればっかりはどうしようもありません。まあ、滞在3日中の2日が快晴だったというだけでも十分に運が良かったと思い、メリベルを後にすることにしました。しばらくはうっすらと雪が残っているためノロノロ運転でしたが、20分も走ると標高も随分と低くなり、雪もほとんど気にしなくて良くなりました。程なく麓のムーティエに着き、そのままハイウェイを走って今日の目的地リヨンに向かいます。
アルベールビルまでは4日前に通った道、そこからジュネーブ方面と別れてリヨン・グルノーブル方面へ進みます。天気もよく、道も良く整備されていて快適なドライブです。しばらく行くとグルノーブル方面とも別れ、シャンベリーという街に入りました。この街を通りぬければあとはリヨンまで一直線で70km程度です。と、前方にややこしい道路標識が。左車線にも"Lyon"、右車線にも"Lyon"、そして右車線には小さく"Peage"と書かれています。うーんどういう意味だろう。仏文科卒のナビゲーターもわからない様子。「ええいっ」と決め打ちで左車線を行ってしまいました。特に問題もなく進みますが、なんだか道が田舎臭くなって、信号なんかもあったりします。うーむこれは何か間違えたか、と思い、車を停めて地図を確認すると、どうやら最短距離で行く高速道路を離れ、ずいぶんと大回りの一般国道に入ってしまったようです。そうか、"Peage"とは「有料道路」という意味だったのか!と気付いても後の祭り。ちょうど車を停めた場所が眺めの良い公園だったので、とりあえず記念撮影。目の前に広がるのはブールジェ湖という湖で、その向こうにはエクスレバンの街が見えています。サッカーファンの方なら聞き覚えがあるであろうこの街は、1998年のフランスワールドカップで日本代表が事前キャンプを張った、温泉療養で知られる風光明媚なところです。回り道になってしまったのは失敗だったけど、思いがけずこういう景色を見ることができ、これはこれで良かったかな。結局そのまま一般道を30分ばかり走り、ようやく本来の高速に合流して再びリヨンを目指します。そこから40分ほどでリヨンの市街地に入り、12時過ぎには旧市街の駐車場に車を停めることができました。
リヨンはパリ・マルセイユに次ぐフランス第3の都市であり、フランスの新幹線、TGVの最初の路線の行き先でもありました。さて、我々のパリ行きの飛行機は3時15分発。余裕を見て1時間前にはチェックインするとして、ここから空港までの所要時間を1時間と見積もり、差し引き1時15分までのわずかな時間で市街観光をしようと思います。ともあれまずは昼食ですが、あれこれ探し回っている時間はないので、目に着いたレストランに入りました。ここで本日の定食は小牛のカツレツ(シュニッツェルというのかな)。一番上の写真がそれですが、さすが美食の都として知られるリヨン、フラッと入ったレストランなのに、今回の旅行で一番の味でした。本当はゆっくり食後のコーヒーでも飲みたいところですが、時間がないので急いでケーブルカーの駅へ。ここから5分ほど地下を走るケーブルカーに乗って、フルヴィエールの丘というところに登ります。丘のうえにそびえる寺院と、そこからの市街地の眺めがリヨンを代表する観光名所のようで、高所好きの私としてはとりあえず行かずにはいられません。
丘の上に立つフルヴィエール寺院の中を見る余裕はありませんでしたが、展望台からは、なるほど市街地を一望することができます。さすがにアルプスからは随分離れてしまったので、地平線にはこれといって見るべきものはなく、茶色い屋根の街並と、その間を流れるソーヌ川、ローヌ川を眺めるだけなのですが。ともあれ、そこからは石畳の坂道を降りて旧市街へ。いかにもフランスの古い路地といった感じのところを通って駐車場に戻ってきたのは1時半。ちょっと時間が怪しくなってきました。あわてて車を出し、先程来た道を戻ります。
ところがここで道路が大渋滞。なんてことでしょう。東京都心なみの速さでしか動きません。空港までは25km、市バスでも50分とあるので油断していたのですが、どうやら思いきり混雑する道に入ってしまったようです。我慢できずにUターンして他の道を探しますが、なにせサボア地方全体のおおまかな地図しか持っておらず、市内の抜け道まではなかなかわかりません。そうしているうちにも時間ばかりが過ぎて行きます。
これはもう駄目かと思ったところで、イチかバチかと"Peripherique"という看板の方へ行ってみることにしました。英語の"Peripheral"は「周辺の」という意味ですから、これはおそらく環状道路のことでしょう。これで街の中心部を迂回できればと思ったのですが、これが大正解。最新鋭の高速道路がトンネルを駆使して瞬く間に市街地を通り抜けていきます。10分もすると、"Saint Exupery"という看板が見えてきました。これ、「サンテグジュペリ」と読みます。そう、あの「星の王子さま」の作者にちなんで名付けられた空港なのですが、時計をにらみながらのドライブでは、そんな名前を堪能している余裕もありません。時刻はボチボチ2時半、空港出口で高速を降り、一般道をしばらく行くと空港ターミナルが見えてきました。本当はレンタカーを返す前にガソリンを満タンにしなければならないのですが、その時間も惜しいので、追加料金を払って済ませてしまうことにします。EuropCarの事務所に着き、「ずいぶん汚したわねぇ」と呆れる事務員をよそに、慌てて返却手続きを済ませました。ちょうどターミナル行きのシャトルバスが来たところで、それに飛び乗って2時55分、エールフランスのチェックインカウンター着。出発20分前です。
よし、どうにか間に合ったかと思ったのですが、係員の態度は冷たく"You are too late."の一言。こういうとき、私のこれまでの経験から言ってエールフランスというのは世界一融通の利かない会社です。まったく取りつく島もなく、発券カウンターにいって何とかしてもらいなさい、と言うだけ。しょうがないので言う通りにすると、今度は発券カウンターの係員も何だかすげない態度です。「困った客だわねえ、どうしたもんかしら」とでも言いたげな、けだるそうな態度で端末をいじっていましたが、しばらくして「ホントは駄目なんだけど、私の*好意*で特別に次の便に振り替えてあげるからね」と、いかにも恩着せがましく搭乗券を渡してくれました。まあ、こういうところのフランス人の愛想の悪さにも慣れてきたし、街で道を聞いたとき何かには親切な人が多いし、結局のところ「どういう職種の人の態度がデカいか」というのも国民性なんでしょうけどねえ。
さて、その係員がくれた搭乗券は午後9時の出発。それまでパリ行きの便はないのです。いっそのこと航空券は捨てて、TGVでパリに向かった方が若干早いのですが、まあ二人で2万円かそこらの追加出費も痛いので、おとなしく空港で時間をつぶすことにしました。パリのホテルに到着が遅くなると電話連絡し、あとはコーヒーを飲みながらの読書ぐらいしかやることはありません。コーヒーを飲み干すと今度はコンコースのベンチで読書。夕方になったらファーストフードで夕食を済ませ、やっと搭乗時間となりました。乗ってしまえばパリまではすぐで、午後10時には到着。それからRER(郊外鉄道線)に乗って約30分、リュクサンブールの駅で降りると、目の前が今夜の宿の"Hotel Observatoire"でした。