第二日

2015/2/16

第二日の行程

国土地理院発行の地理院地図(電子国土Web) を元に加工(2015)

貧乏性というか小市民というか、旅に出ても倹約ばかりしている。さすがにリフト券代をケチることはしないが、宿泊費と高速道路代は、削りしろの最たるものである。

そういう私にとって、レストイン多賀は何とも小気味良い宿泊施設だ。わずか800円で快適なマットで眠れるばかりか、綺麗な風呂にも入ることができる。それに加えて嬉しいのは、高速道路を降りなくて済むため、通行料金が通しで計算されるということだ。小分けにするよりも割安なのに加えて、深夜を「またぐ」ことにより、昨日の夜に乗った八王子ICから、今日この後に降りる予定の兵庫県山崎ICまでが、すべて深夜割引の対象になる。出発早々かなり得をした気分だ。

その仮眠室だが、最初に入ったときは、風呂あがりということもあって随分あたたかく感じたのだが、明け方になると結構寒かった。毛布を持参したのは正解だったが、それでも身体が少し冷えた。となるとここが入浴施設を兼ねていることが活きてくる。午前7時ちょっと前に目覚めたが、急いで風呂に入って暖まり、規定の6時間が経過する直前の7時15分にチェックアウトした。ちなみに6時間を過ぎるとあと800円の追加料金である。

さっそく車に乗り込んで、名神高速をひた走る。前日のうちに買っておいたパンなどをかじりながら、京都を抜け、吹田からは中国道に入る。途中の西宮名塩SAで給油を兼ねて休憩し、9時半過ぎには山崎ICに着いた。ここまで全く渋滞もなく、順調なドライブである。高速を降りてからは、わかさ氷ノ山スキー場を目指してナビの指示のままに進む。

今日は、このあたりにある4つのスキー場で滑ってから、さらに長距離ドライブで広島まで行く予定である。移動距離が長くて大変だが、朝と夕方のスキーができない時間を効率的に使い、一気に移動を済ませることができる。今回の旅行の中でも、なかなかうまく考えたと我ながら悦に入っている部分である。4つのスキー場をめぐる順番としては、最も遠いわかさ氷ノ山スキー場を最初に訪れ、そこから戻りながら他のスキー場に寄ってくることにしようと思う。山崎ICからわかさ氷ノ山スキー場までは約70km、1時間半ぐらいで着くだろうか。

インターからスキー場までは、距離は長いものの快適なドライブである。空は快晴。途中の峠越えも、この天気なら路面状況が気になることもない。予報では明日から徐々に天気がくずれてきそうなだけに、今日はたっぷりと青空を楽しんでおきたい。ばんしゅう戸倉スキー場の看板を過ぎ、新戸倉トンネルを抜けたら鳥取県である。そこから一旦は里に降りていき、若桜の町が近づいてきたところで横にそれてスキー場に向かう。最初は広かった道が少し細くなり、しばらくするとわかさ氷ノ山スキー場の看板が見られるようになった。ところが、看板通りに進んでもどこが駐車場だかよくわからない。すれ違いもできないような細い道を進んでいったら、少し開けたところに数台の車が停まっていた。すぐ近くにセンターハウスなどは無いが、コースに面しているので滑っていけば良さそうだ。さっそく車を停めてゲレンデに出る。

わかさ氷ノ山

このスキー場は、「樹氷スノーピア」と「イヌワシ」という二つのゲレンデから成っている。車を停めたのはイヌワシの方だが、連絡コースを使ってスキーを履いたまま行き来ができるようだ。イヌワシのコースを途中から滑り降りたら、1回券を4枚ほど購入してリフトに乗る。イヌワシゲレンデは実質的にこのリフト1本分だけのようなので、途中から横にそれて樹氷スノーピアゲレンデに向かった。

ゲレンデマップを見ると、こちらは縦に長くてもう少し滑り応えがありそうだ。さっそく、最も長いと思われる樹氷第2パノラマリフトに乗った。そのあと更に上のリフトに乗り継ぐつもりだったが、どうやら運休らしい。そこでまずは林間コースと書かれた方に進む。しかしこれが林間コースとは名ばかりで、途中から広くてコブコブの急斜面が現れた。ちょっと驚きながらもこのコースを降り、さっきのリフトにもう一度乗ったあと、今度はこのゲレンデのメインコースと思われるパノラマコースを滑る。名前の通り眺めの良いコースで、イヌワシゲレンデの方を向いて撮ったのが上の写真である。中央に見えている白い山は、恐らく氷ノ山だろうか。氷ノ山といえば、以前は名前さえ知らなかったが、数年前に読んだ谷甲州の「単独行者」で、若き日の加藤文太郎が何度も通った山として描かれていて、それ以来ずっと気になっていた。実際、この山の反対側にはハチ北とかハチ高原などのスキー場があり、関西有数のスキーエリアとなっている。スキー場を語るには避けて通れない山だと言ってもいいだろう。

パノラマコースからは、連絡コースを通ってイヌワシゲレンデに戻る。そこからリフトに乗って、アルパインコースというところを滑ると、先ほど停めた駐車場の横を通る。そのままスキー板を脱いで車に乗り込み、ばんしゅう戸倉スキー場に向かう。

ばんしゅう戸倉(1)

来た道を戻って県境のトンネルを抜けたら、程なくばんしゅう戸倉スキー場に着く。国道にほぼ沿ったところに駐車場があるのだが、そこから見えるのは急斜面が一つだけである。関東でいうと、奥利根国際スキー場や武尊牧場スキー場に似た感じだ。さっそくチケットを買ってリフトに乗る。リフトには「登行用」と書かれているが、おそらく初中級者は下りも乗ってよいという意味だろう。

リフト山頂駅が近づくと、景色ががらっと変わる。台地の上に出たのだ。そこに高丸リフトというのが架かっているのだが、ここがスキー場のメインコースだろう。上の写真を見てもらえばわかるように、コースの下は平坦になっているが、その向こうのストンと落ち込んでいるところがどうなっているかは、近くまで行かないとよく見えない。

ともかくここを滑ることにする。実はここにはもうひとつ「みはらしゲレンデ」というのがあるのだが、イラスト調のゲレンデマップを見た限りでは、高丸ゲレンデと同じ斜面を共有しているだけのように見えた。なので、わざわざ滑る必要もないだろうと思い、リフト券は2回分しか買わなかったのだが、高丸トリプルリフトから見ると、高丸ゲレンデとみはらしゲレンデの間には谷があり、はっきりと別のゲレンデになっているではないか。これは滑るべきだったかと思ったが、下まで降りないと追加のリフト券は買えない。がっかりしかけたところでリフトが山頂に着くと、そこからみはらしゲレンデも見渡すことができた。それほど長いコースでも無いし、一番上の部分は高丸ゲレンデと重なっているので、気にせずこのまま高丸ゲレンデを降りることにする。

ばんしゅう戸倉(2)

高丸ゲレンデを下まで降りたら、あとはさっきの急斜面を行くだけである。入口付近には「超上級」と書かれた看板があり、中級者の侵入を拒んでいる。そこを通り過ぎて覗き込んでみたのが上の写真である。写真ではわかりにくいかもしれないが、思ったほどの急斜面でも無い。頑張れば中級者でも降りれそうな感じだ。思いのほか綺麗にグルーミングされた斜面を大回りで滑り降り、満足して駐車場に戻った。

次の目的地である若杉高原おおやスキー場へは、山崎ICに戻っていく国道29号線を数百メートルほど進んだところで左折して東に向かう。その交差点には、「若杉高原おおやスキー場」「新戸倉スキー場」と二つの看板が出ている。事前の調査では、新戸倉スキー場は既に廃業しているはずなのだが、何だか気になりながら進む。新戸倉スキー場の入口と思われるところまで来たが、山の陰になってゲレンデは見えない。しかし、いくら平日とはいえ人が入っていっている気配が全く感じられず、やはり廃業で間違いないだろうと判断してそのまま進んだ。そこからさらに2kmほど進んだところが若杉峠。その先の下り坂をもう1kmぐらい行くと、若杉高原おおやスキー場である。

若杉高原おおや

広い一枚バーンのゲレンデの左端にリフトが架かっている。コース中央には、綺麗にえぐられたモーグルバーンがある。どうやらこうして見えているのがほぼ全貌といっていいスキー場のようだ。そう思って1回券を1枚だけ買い、さっそくリフトに乗ってみた。ところが、リフトの上から横を見ると、何だか妙に短いコースが横に伸びている。ちょっと意外な展開だ。後でわかったことだが、山頂からここに回り込む連絡コースもあるらしい。

リフトを降りると、広いコースが麓まで続いているのが見える。とばしたくなる眺めだ。峠の反対側に来たので、ばんしゅう戸倉に比べると東側の開放的な景色が見える。空いているので危ないこともなく、大回りであっという間に滑りきってしまった。

この時点でまだ午後1時半である。時間に余裕があるなと思っていたら、スキー場前の道は峠の反対側にも続いていることに気付いた。考えてみたら当たり前で、峠を越えてくるよりも麓の方から登ってくる方が自然だし、そもそもここは、ハチ北やハチ高原と同じ養父市なのだ。となるとそちらの方に抜けていくという案も浮かんできたが、そうは言っても移動に1時間以上はかかりそうだ。せっかく沢山のスキー場があるエリアに行っても、その中の一つを滑って終わりという感じだろう。それにその後の行程もしんどくなる。ここははやる気持ちを抑えて、当初の予定通り次の目的地であるちくさ高原に向かうことにした。

ちくさ高原

若杉峠を逆向きに戻り、再び国道29号を山崎IC方面に向かう。来るときはまわりを見る余裕が無かったが、音水湖という湖の眺めが綺麗だ。20kmほど走ったところで右折して国道429号に入る。しばらく行くと千種の集落が現れ、生活道路らしさのあるところを右に入る。ここからはゆっくりとした谷あいの道である。地図を見ると、いかにもちくさ高原で行き止まりという感じであるが、よくよく見るとその先にも道が続いている(もっとも冬期通行可能かどうかは確認していない)。決して急な山道ではないが、結構な距離を走らされ、やがてようやくゲレンデが見えてきた。駐車場は、レストハウスのある場所からゲレンデとは反対側に少し上がったところにあり、スキー場全体が良く見える。基本的には長いリフト1本で全コースをカバーする構成だが、コース間が森で隔てられていて、もう少し広さを感じるつくりになっている。

ゲレンデ中央に架かっている、長さ760mの第2ペアリフトに乗って山頂に向かう。リフト降り場には、左側にパンダ、右側に猫(?)の可愛らしい雪だるまが並んでいた。ゲレンデマップには「晴天時には氷ノ山が見えます」と書いてあるので、じっくり景色を眺めてみる。正面に綺麗な形をした山が見えるが、ちょっと距離が近すぎる。さらにじっくり眺めると、左手の奥の方に白くて丸っこい頂が見える。たぶんこっちだろう。ちなみに後から地図を見てみた感じでは、正面に見えていたのはたぶん三室山だと思う。

ちくさ高原の雪だるま

景色を堪能したら、まずは麓から見て左側にある未圧雪の上級コース、次は右にある林間風のメルヘンコース、最後に中央を直線的に降りていくダイナミックコースを滑る。それぞれに風味が違って面白い。

滑り終わったら3時20分である。近所に小さなスキー場でもあれば、急いで滑りにいくところだが、周囲50kmぐらいの中には未訪問のスキー場は無さそうである。そうなると後は宿に向かうだけなので、あわてずのんびりと車を走らせることにした。国道429号まで戻ったら、そのまま西に向かって志引峠を越え、岡山県に入る。途中、大茅スキー場という古ぼけた看板を見つけたが、そんなスキー場はもう無かったはずだと思って通り過ぎる。しかし後でよく調べてみたら、大茅スキー場は今も健在であった。もっとも、現在は週末のみの営業ということで、この日はいずれにせよ滑れなかったわけであるが。

急いでいくのなら、この先から鳥取自動車道に入ってそのまま中国道に向かうべきところだが、早めに4スキー場を滑りきってしまい、予定よりも時間がある。高速料金の節約も兼ねて、しばらくは一般道を走って地元の雰囲気を味わうことにした。広域農道も活用して美作市を抜け、津山市に入る。ここは結構栄えている町で、中心部を流れる吉井川の景色が心を落ち着かせる。津山を抜けるとあとは大きな町もなく、途中で県道を経由して国道313号に出る。その先、国道313号が南の方に抜けてしまうあたりにある北房ICから中国道に入った。のんびり走ってきたのでもう6時近い。

あとは170kmほど高速を走るだけである。ところが、このあたりから雨が降り始めてきた。天気予報通りとはいえ、明日の状態が心配である。小1時間ほど走ったところで、なんだか眠気を感じてきたような気がしたので、夕食も兼ねた休憩のため七塚原SAに入る。しっかりと食事を取って運転を再開したら、眠気などどこへやらという感じである。どうやら単に空腹だっただけらしい。雨が徐々に強くなる中、戸河内ICで高速を降り、15分ほどで今日の宿である龍頭ハウスに到着した。ログハウス風の綺麗な建物だが、公共施設らしく格安で泊まることができる。部屋は和室でけっこう広い。平日ではあるが、若い宿泊客が他に1〜2組はいるようだ。風呂は一応温泉らしく、ゆっくりつかると今日いちにちの疲れが取れる。今日ぐらいの好天がずっと続けば言うことは無いのだが、外の様子を見るに、その可能性は低いだろう。そのまま10時前には就寝。寝ている間も外からは雨音が聞こえてきていた。

本日の滑走: 4スキー場、リフト10本

本日の走行距離: 631km

目次 前のページ 次のページ